パン喰い戦争(序章)

第三十七次世界大戦。
今回の戦争の何よりの特徴は、酷くどうでもいい理由で戦争をしているわけではないことである。


人間はもはや何もかもやり遂げてしまった。
ありとあらゆる社会問題もついに科学や技術により大きな統一を果たした。
全て人間の意志を取り入れる事が出来る政治によって解決し、世界中で起きていた紛争は酷く昔に全てが終結した。
その上自然との共存も完全に実現し、人間の精神自体、個としての存在ではなく互いに共鳴する大きな一つの集合体となりはじめている。
すべての見解・情報を瞬時として脳内に送り込む技術に成功したため、人々は拙く不完全な思想を持つことがなくなり、不条理な事に対して出来る限りの救済を注ぎ込む精神を持ち合う事が出来た。
まさに人間は完全といっていいほどの成長を果たしたのだ。


しかし取り組むべき問題や解決すべき不安を全て失うということは、今までそれを糧に向上していた人間にとっては退屈なものであり、未来に行う事を見失うものであった。
最初のうちは全てのものに対して平穏にいられたものの、次第に追い詰められ、在る意味緊迫したその状況に陥った。
そして緊迫の糸は切れ、ついに全員の意志により一つの行事が決定した。
「一つのパンのために行う戦争」
肩書きなど何でも良かった。


丁度平穏年号100年。人々はその時、一つのパンを作り上げた。
味も大きさも別になんて事ないパンである。
ただ一つそのパンは半永久的に腐り食べれなくなる事がない点をのぞけば。
そしてそれを誰が食べるかを決めるために全人間が参加する戦争を起こしたのである。
もちろん子供だろうが女性だろうが関係なしに。
戦う意志を持ちうるだけの精神(物心もついていない赤ん坊だけは除外した)を持っているものならば全て参加する戦争である。


さて戦い方はこうである。
この戦争は国と国との戦争ではないため、味方や敵などという概念はない。
ただ自分がやられなければ良く、他のものが全てやられてしまえばいいので在る。
なぜ、「やられる」という表現をしたかというと、この戦争で死ぬ事はない。
むしろ今の社会では死ぬも生きるも本人たちの自由であり、どんな病気や怪我をしようが死ぬ事はない。たとえ突然にそれを迎えたとしても内蔵の精神保管用のチップによりすぐに復元が可能である。
どうしても手持ち無沙汰になり死にたくなった時は申請を行う事によりいつでも実現可能だ。
よって今回もたとえ致命傷を負おうともそれによって死は与えられない。
もちろん「やられた」瞬間と同時に死を迎えるように申請したものはたくさんいたが。


ちなみに「やられる」とはもちろん肉体的に死んだ事である。
肉体的に死を迎えると精神保管用チップが一人一人に付けられている保全装置により戦場外に送られ、全自動的に自分の肉体を作成されその中に埋めこめられる。
事前に死を申請したものは肉体が死を迎えた後須らくそこでチップを破壊する。
ちなみにこのチップはたとえ肉体が木っ端微塵になろうとも大爆発に巻き込まれようとも傷一つつかないほどの頑丈なつくりである。
唯一そのチップに内蔵されている自爆装置だけがその破壊を行う事が出来る。


さて、この戦争で使われる武器は個人の身体能力で扱う物に限定されている。
その範疇なら果物ナイフでもよければ、ロケットランチャーでもよい。
しかしいくつも持つ事は許されず、一人の人間にただ一つだけである。
もちろん武器は戦争管理委員会が提供するので、チップに傷を付けてしまうほど強力なものや全人類を一瞬で死に追いやるほどのものなど、馬鹿げたほどの威力が在るものは申請もれしてしまう。
肉体の部位の能力を高めるようなそういう補助的な装置でもよいが、それも一部分に指定しなければならない。


さて今回はなぜこのような説明をしているかというと、実は戦争が終わって一年、全人類における投票による戦争の中での名場面・名人物とされた(ちなみにこの戦争におけるすべての人間の一部始終は全て情報化して残され、知りたい人に提供される)を行った。
それを今回、みなさんにそれの高順位のものを今回一つ一つ発表していこうと思っているため事前にこういう作業がどうしても必要だったのだ。
もちろん念のため本人たちの了承は得ているが、人間はすべて過度に寛容になってしまったため、中には発表するには見苦しすぎるものなども在るので注意を。


それでは順に発表する。


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今更ながら作者の鉄です。どうも。
今回もいつものように短編小説を書くはずでしたがなんだかたくさんかけそうだったので(というか膨大な量になりそうだったので)分散化することにしました。
ということで今まで通り短編小説も書きつつこちらもでき次第乗せていこうと思います。
というか自分のウェブページに載せればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、いやぁこっちで思いついたものなのでせっかくなのでこっちでやっていきたいと思います。
まぁたぶんウェブページにも載せるとは思いますが。
ということで今回は序章で終わらせてもらいます。
更新の遅いブログですがこれからは少しずつ書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。